猛暑の日本列島で21日、オリンピック(五輪)の競技が始まった。大会期間中はほぼ真夏日となる予報。専門家は熱中症への注意を呼びかけ、選手らは体温調整や水分補給で体調管理を進める。台風シーズンも近づき、大会関係者は有事に備える。
開幕に先立つ21日午前、福島県営あづま球場(福島市)でソフトボールが始まった。炎天下で豪州と対戦した女子日本代表の選手たちは、ベンチ前でクーラーボックスからペットボトル飲料を取り出し、水分補給を繰り返した。
19日の現地入りから連日の猛暑日となり、主将の山田恵里選手は「なるべく日陰にいたり、氷で頭を冷やしたりしている。ベンチの後ろは空調が利いていたので、一時的に避難できたらいい」と話した。
ただ試合中にそれができるのも、ベンチに戻った際だけ。定位置の中堅を守っているときは「何もできないので、太陽の光を浴びるしかない」。
エースの上野由岐子選手は、保冷剤入りのアイスベストを身につけているという。「なるべく体をどんどん冷やして、パフォーマンスが下がらないように気をつけたい」
男子サッカーでも水分補給に重点を置く。大量の発汗で体重が落ちると、競技力に影響するからだ。
男子代表の松本良一フィジカルコーチによると、普段の体重から2~3%減ると、速く走るスプリントや認知能力が落ちるという科学データがあるという。「水分を取ることによって、体重を落とさない。体重を落とさないことによって、選手のパフォーマンスを落とさないということにつながっていく」と話す。
そのため、運動前に水分を蓄える摂取や、運動後に減った体重を素早く元に戻すための摂取など、選手個々の体重に合わせ、飲むタイミングや量も細かく指示している。DFの橋岡大樹選手は事前合宿中、「練習が終わってから寝るまでに、最低でも500ミリリットルのペットボトル3本以上は飲んでいる」と話した。
男子代表は欧州でプレーする選手たちが半数近くいる。日本より気候が穏やかなため、水分を取る量が比較的少ないという。欧州組には、より意識的に水分を取るよう促している。
日本の酷暑、世界から不安視
日本の酷暑は、世界からも不安視されていた。英国の非営利団体「英国持続可能なスポーツ協会」が今年5月に出した報告書では、日本で2019年夏にあった五輪のテスト大会中、ボート選手が暑さで手当てを受けたり、トライアスロンのランの距離が短縮されたりした事例を紹介。「夜間のレースでも、救急搬送される選手が出る可能性がある」と警告した。
大会組織委員会が最も頭を悩ませていた問題の一つも暑さ対策だった。新型コロナウイルスの感染拡大で6都道県の無観客が決まった際、「一つの難題への不安が減った」と漏らす幹部がいたほどだった。
1万人以上の選手のほか、競技関係者やボランティアに対しては、新型コロナ対策との両立という新たな課題にも直面している。複数の大会関係者によると、選手村などに置くアイスバス(氷風呂)は体を冷やす効果的な手段だが、感染予防の観点から氷の頻繁な入れ替えが必要になった。選手村の製氷機ではまかなえず、五輪とパラリンピックの期間中、計400トン程度の氷を追加発注するという。
競技会場にはミストシャワーやアイスベストなどを配備。ボランティアにはアイスクリームなどを配る。組織委の中村英正・運営統括は「マスクは着け、水はこまめにとる。どこに水があるかの情報を選手やスタッフに共有するのが大切だ」と語る。(井上翔太、勝見壮史、香取啓介)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル